島崎藤村
島崎藤村は、明治、大正、昭和の三代にわたって息の長い活動をつづけた日本近代文学を代表する作家です。
“まだあげそめし前髪の”と歌い出される「初恋」が収められている『若菜集』の詩人として登場し、“小諸なる古城のほとり/雲白く遊子悲しむ”の「千曲川旅情の歌」などが収められている第四詩集『落梅集』を最後に、詩作から決別し小説家へと転身していきました。藤村最初の長編小説『破戒』は日本自然主義文学の記念碑的作品として高い評価を得て、日露戦争後の文壇をリードしました。以後、『春』、『家』、『新生』、『夜明け前』に至るまで、自らと周辺の人々をモデルとしてリアルな小説を描き続けました。その作風は自然主義と呼ばれることもあります。