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名小路 雄さん(停車場ガーデン施設長・主任ガーデナー)

|小諸駅から15秒、人気のガーデンを育てるガーデナー

小諸人vol.2|名小路 雄さん(停車場ガーデン施設長・主任ガーデナー)

 

「景観園芸」との出会い

――小諸駅を出てすぐ左手一体の停車場ガーデンは、四季を通じた変化が美しい庭があり、明治時代の小諸停車場のランプの油庫からデザインをイメージした建物に地元食材を使ったカフェや素敵なショップがあり、また、せせらぎの丘を挟んだエリアには小諸宿の本陣を復元した本陣主屋内に手仕事ギャラリーとショップもあって、地元の方にも観光の方にも人気のエリアですね。私も大好きな空間です。

という長い前置きにも関わらず、今日は、名小路さんとこの素敵な庭についてだけ(笑)聞きたいと思います。

素人的に「すごくマメに、丹精込めてお庭を手入れされているな」と日ごろから感じています。名小路さんは、あまり聞いたことがない分野で勉強されたと聞きますが、そのあたりについてお話いただけますか。

淡路島の兵庫県立淡路景観園芸学校で景観園芸というものを学びました。兵庫県が、阪神淡路大震災を機に街の公園や緑地帯の価値を再確認して、町づくりをする上でそうした場所を造ったり、また、管理する人材も育成する、ということを目指した学校でした。

――公園が、災害時において火災の延焼を食い止めたり、地元の方の避難場所としての役割を果たすといった考え方でしょうか。

まさにそうですね。災害時にはそういった役割を負い、そうでないときには、皆が集まって活動が生まれたり、憩の場所であったりするものが公園なんですよね。

「造園」というと日本庭園を造ったり、お庭の剪定をするという分野に限られるし、「園芸」という分野だと鉢花を育てて売ったり、趣味でコレクションをしたりという分野に留まる。でも、公園を造るにはそのどちらの知識も必要で、更にそこに住民とコミュニケーションを取ったり、市役所の人たちと調整をしたり、といった幅広い知識が必要になる。そうしたことをまとめたものが「景観園芸」という分野だと思います。

――さっそく、素人が考える「庭」に留まらない世界のお話、ありがとうございます。その「景観園芸」という分野に惹かれたのはなぜですか。

「景観園芸」という分野に惹かれたというよりは、僕は庭のことを学びたくて日本に数少ない学校に行ってみたら、「景観園芸」という分野を知って、すごいなと思ったんですよね。

――庭について学びたいという思いはどこからきたのでしょうか。

中学生くらいの頃から、「何かステキだね」と感じるものが好き、というのはありました。でも庭や植物には興味がなくて、その頃すごくはまったのは家電のデザインと遊園地のデザイン。めっちゃはまってました。もともとは美大を目指していたのですが、ことごとくダメで(笑)、東京の専門学校で空間デザインを学びました。

――遊園地のデザインというと、遊園地という空間全体のなかのどこに何を置いて、ということですよね。

そうそう。

専門学校の3年生くらいのときに転機が訪れて。空間のデザインって、皆同じ課題を受けて、住宅図面とか建物のインテリアの図面を書くのですが、そうした図面上に描かれている庭の部分には、「庭」と書いてあるだけで真っ白なんです。それなのに、「このプランはこのリビングから家族でお庭を見て……」ということをプレゼンテーションで話す。僕は、図面という空間の中にある庭ってどんなだろうと感じて、庭に興味を持つようになりました。

――空間全体の中の庭、というものに興味がいったわけですね。

そうだと思います。

専門学校を卒業してからは、大手デパートに入っている花屋さんで販売を担当しました。贈答用の切花から観葉植物、庭に植える苗や資材までいろいろなものが揃う大きなお店です。

――それまでに興味を持っていた空間の中の庭、みたいなところを扱う仕事でしたか。

違いましたね。自分には、まず植物そのものの知識が不足していました。売っているポット苗はお客さまがお庭に植えるものなのだけど、当時の自分は、その苗についてすら図鑑で得た知識しかお客さまにお伝えできませんでした。なので、まずは個別の植物そのものについて猛勉強する日々でした。

2年程務めた頃に、知人に紹介されて淡路島の兵庫県立淡路景観園芸学校の存在を知ったんです。学校にお庭があって、そこを実習フィールドとして学ぶこともでき、そんな良い場所があるなら行ってみようと思いました。

 

庭が持つ空間性を実現している「停車場ガーデン」との出会い

卒業後は、千葉県のレジャー施設でハーブ園の管理の仕事に就きました。

――空間を造るという仕事に少し近づいた感じが(笑)。

そうなんですよね。でも、人手が足りなかったので、ホテルの食事の配膳だとかそういった仕事をしたり、少しすると施設全体の管理をするような役割になってしまい、馬車馬のように働く毎日でした。それで結局、ハーブ園には手がまわらずに、断腸の思いで園を閉鎖しました(笑)。

――えー!それは悲しい!

そうなんです。そういう日々を過ごすなかで、「何か違うな」と感じていました。

そんなときに停車場ガーデンとご縁があり、2012年10月からこちらで働いています。

――募集があった際には「ここだ!」と感じたわけですか。

実は面接に来るまで、実際のガーデンを見たことがなかったのです。実際に見たときには、すごくきれい!と感じました。これだけの庭が、一年中24時間開放されていて、入場も無料というのは素晴らしいと思いましたね。

淡路で在学中に、いろいろな場所のガーデンを見に行きましたが、市営の公園をNPO法人が運営し、お庭だけでなく、物販を含むカフェ、北国街道の本陣主屋といった歴史的建造物を活用したスペースが全体として成り立っているというのは日本でもなかなか例がないと思います。

「庭」が造る空間性、というか、コミュニティとのつながりも含んだ空間性の中に庭をどう造るかについてここで考えることができると思いました。

――だからこそ毎年、たくさんの自治体が視察に訪れるのですね。

そうだと思います。

 

小諸ならではの苦労

――小諸のこの辺りは標高約660メートルで、スカイツリーのてっぺんとほぼ同じくらいの標高です。名小路さんがこれまで働いていた地域に比べて、小諸は北に位置していますし、標高も高いですよね。小諸の気候の特徴やそれが故に苦労したことはありますか。

気候の特徴としては、日照量が多い、気温の寒暖差が激しい、冬は雪が少ないが冷え込みは厳しいという点だと思います。

苦労したこと、ありますよ(笑)!まず、生えている植物が違います。それから、今までの場所で冬を越せていた植物が、小諸では冬を越すことができない。反対に、夏を越せなかった植物が小諸では越すことができる。最初の数年は試行錯誤でした。

停車場ガーデンは宿根草が多いので、植えたらそのシーズンで終わりではなくて、何年もかかってようやく庭全体として馴染んでくるんです。

――そんな停車場ガーデンの年間を通じてそれぞれの季節の魅力はどんなところでしょうか。

できれば、「四季を通じて」訪れていただきたいです。ベストシーズンは春で、300種類以上の花が咲きます。夏には芝生を含めて、緑が濃くなり美しい。秋には小諸の寒暖差の大きい気候によって花は色が冴えます。草木は紅葉します。冬は、植物に霜が降りて、芸術品のようにきれいです。四季を通じて変わっていく景色を見てもらいたいですね。

 

ガーデナーの仕事~「待つ」ことも仕事のうち

——そんな四季のなかで、名小路さんはどんなことをしているのでしょうか。

ガーデナーの仕事は、「先のためにやる」仕事なんです。

春には、その先の植物の成長具合も考えながら、株分けをして増えすぎた植物は減らし、足りない植物は増やす。植え付けもします。夏は暑さを軽減するために剪定をして風通しをよくします。秋には、冬に備えて、この辺りで「わらぼっち」と呼ばれる、藁で作る雪囲いをします。冬には大きな剪定をします。木が休んでいる時期なので木へのダメージが少ないんです。ベンチのペンキ塗りをしたり、植物の名前や什器を作り直したりもします。春に造るお庭の計画をつくるのもこの時期です。春からのお庭のイメージをスケッチしてみたりすることもあります。

――庭の植物の時間軸に合わせてガーデナーさんも活動する、といった感じを受けますね。

そうだと思います。庭づくりって、四次元の世界なんです。縦、横、高さ、に「時間」という軸が加わる。植物の成長とともに変化をしていく時間です。

――植物の時間軸は、ある意味で、人間がコントロールしずらいもので、「待つ」という姿勢とか感覚が求められるかもしれませんね。

そうですね。無理やり作った庭というのは、僕は好きになれません。人間の都合だけで作った庭では植物も元気に育たないんです。

庭は数年かけてようやく植物が馴染んで、落ち着いてくるものだと自分は思うのですが、「待つ」ことに、現代の日本の行政や日本人は慣れていないのかもしれません。

――「待つ」という感覚を持っているガーデナーさんがいる庭というのは、小諸に馴染むように感じます。小諸は古い建物などが手を入れすぎない形で残されている、つまり、「生」の歴史を生活のなかで感じる場所だと思います。時間を経ることで植物が馴染み落ち着くことで作られていく庭は、こういった小諸時間のようなもののなかに、自然な形で同調するのではないでしょうか。

 

「市民ガーデン」

――停車場ガーデンの庭では、たくさんの方が庭の手入れをされている印象があります。

お庭担当のスタッフは僕を含めて4人ですから、多いとはいえないですね。

ボランティアグループの「こもろ花くらぶ」さんが週に一度、「山野草クラブ」さんが月に二度、お手伝いに来てくれます。二つの団体ともに、20名強がボランティアスタッフとして登録しています。僕は、ボランティアというと、自分の好きなように庭づくりをしたい、という方が多いイメージがあったのですが、小諸のボランティアさんは、停車場ガーデンを維持する、そのために無償で来てくれています。すごいことですよね。

ガーデニング経験がほとんどなかった方も、だんだんと上手にできるようになってきていて、このボランティアスタッフの皆さんのスキルはかなり高い!と思います。

こうしてボランティアさんが積極的に支えてくれるのも、このガーデンが、市民参加型で計画されたという背景があればこそと思います。

大手造園会社がつくる庭は、地域住民とのコミュニケーションが脆弱で、作ったら終わり。だけれども、停車場ガーデンはそうではなく、「市民ガーデン」として成り立ち、維持されています。

市の施設なので、市民に開かれた場であるべきですから、市民が行うさまざまなイベント会場として使ってもらったり、こちらの活動をできるだけ発信するようにもしています。こうしたことに税金を使っている小諸市は、すごいと思います。

 

庭づくりは固定観念をもたない方がいい

――これだけいろいろなお花があるなかで、名小路さんがもっとも好きなお花は何でしょうか。

あー、よく聞かれる質問なんですよね。う~ん……。

――月並みな質問ですみません……。

全部好きですね。

――もう、まるごと全部のお花が好きだ、と。

そうです(笑)。

ガーデナーとしては、固定観念はもたない方がいいと思っています。固定観念をもつことで、植物の組み合わせやデザインの幅が狭まってしまうんじゃないかな。僕は、いまだに勉強と発見の繰り返しです。

――庭づくりの勉強の際に参考になるような資料はどういったところで入手するのですか。小諸は大きな本屋さんもそう多くないので、苦労しそうな……。

市立小諸図書館は優秀です!

推薦図書も置いていただきました。

[ガサガサ。本棚を確認。]

こういった本も読んでいますよ。

[『MY GARDEN』『BISES』『十勝 千年の森の庭仕事』『ベニシアのハーブ便』を見せてくれる。]

――最後に、名小路さんの将来の夢を教えて下さい。

夢?……う~ん……。

――「夢のようなもの」でも……。

そうだなぁ。世界の庭を見て、小諸に活かしたいですね。固定観念にしばられることなく、いろいろな場所の庭の良いところを取り入れていきたいと思います。

――今日はどうもありがとうございました!これからも素敵なお庭を楽しみにしています!

[ もっと知りたい、名小路さん!]

出身
長野県木曽町(育ちは神奈川県横浜市)
好きな食べ物
フライドポテト、ナッツ類(シンプルで香ばしいものが好きなのです。たからパンも耳が好き)
嫌いな食べ物
 内臓系(なぜかは不明だが、大人になって嫌いになった)
趣味
映画鑑賞(ホラー以外は全て好き。特にヒューマンドラマが好き)、民芸品・郷土玩具・手工芸品・陶器・木工品の収集(時代にはこだわらないが、手仕事であること、そして、実用性の高い物)
小諸のココ!が好き 自然が豊か、坂の町だけあって見晴らしがよい!、歴史を伝えるものが生で残っている。
私の自慢
器用貧乏です。
私だから知っていること
停車場ガーデンにあるハートの石、ミッキーの石、こもろすみれの石の在処を知っている!
[停車場ガーデン] 小諸駅から徒歩15秒。四季を通じた変化が美しい庭と、敷地内に残る明治時代の停車場のランプの油庫からデザインをイメージした建物に地元食材を使ったカフェレストラン、花・ハーブの苗・ガーデニング用品・雑貨を販売するショップが併設されている。また、せせらぎの丘を挟んだエリアには小諸宿の本陣を復元した本陣母屋内に手仕事ギャラリーとショップもある。

 

連絡先:停車場ガーデン(指定管理者:NPO法人 こもろの杜)
〒384-0025 長野県小諸市相生町1-1-9
●TEL&FAX 0267-24-2525
●E-mail: house@t-garden.org
●URL: www.t-garden.org/
●Facebook: 停車場ガーデン
【ショップ (木曜定休)】
営業時間4月〜10月 9:00〜19:00
11月〜3月 9:00〜18:00カフェのご利用 11:00〜閉店まで(ラストオーダー1時間前)
ランチタイム  11:00〜14:00