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磯貝幸司さん(こもろ轟屋)

|坂の町・小諸で人力車の俥夫(しゃふ)として生きる

小諸人vol.1|磯貝 幸司さん(こもろ轟屋)

小諸ならではの人力車の経験と工夫

――磯貝さんは、その気立ての良さと、ていねいなおもてなしをする人力車の俥夫(しゃふ)として、今やすっかり小諸城址・懐古園の顔ですね。俥夫として、今年で何年目ですか。

2014年9月からなので、2年半目です。小諸の観光案内所の方に「人力車の仕事があるよ」とご紹介いただいて、その後、先輩俥夫と接して、その方の人柄や人力車の魅力に魅かれたのがきっかけでした。

――俥夫のお仕事は体を使いますが、子どもの頃から、体を動かすのは好きだったのですか。

子どもの頃は、インドア派で、自宅でもゲーム、お友達の家でもゲーム、という感じでしたね。今思うと、もう少し外で遊べばよかったかな、と思います。それを今楽しんでいる感覚ですね。子どもさんには、怪我をしたり、泥んこになりながらでもいいから、お友だちと外で過ごす、という体験をして育ってほしいな、と思ったりします。

――懐古園の入口から続く「一騎立ての坂」を、人力車で一気に駆け上がるのは見せ場ですよね。これはぜひたくさんのお客様にお楽しみいただきたいです。

「それでは、参ります!小諸城、大名道中、いざ!参ります!」

タッタッタッタ…(笑)

という感じで口上を述べる!で、タッタッタッタ・・・(笑)と人力車を引くわけです。

お客様が女性の場合は「お姫様道中、いざ!参ります!」タッタッタッタ…ですね(笑)。

お城の中をご案内するわけですから、お客様は「お殿様」「お姫様」なんです。恥ずかしがりながらも、喜んで下さる方が多いです。

――私も磯貝さんに「お姫様道中!」といわれて、喜んだ記憶があります(笑)。それにしても、あれだけ一気に駆け上がって、その後、いつもの笑顔でご案内を続けるというのは驚異的ですよね。

お客様のご案内は懐古園だけでなく、北国街道沿いもさせていただくのですが、「こんなに坂を上り下りする人力車ははじめて乗った」とおっしゃるお客様が多いです。坂の町・小諸、ならではの人力車、です。

僕は、はじめのうちは、小諸の坂が上れなかったんです。

もともとジムに通っていたので体力には自信があったのですが、人力車は力の使い方が違いますね。上るときは体重を前に、下がるときは体重を後ろにかけるのですが、特に坂の多い小諸では、この力の配分が難しかったです。空の人力車を引くところから始めて、だんだんと加重していって、最後には男性二人をお乗せできるようになる、ここまでできるようになって、ようやく半人前ですかね。平地よりも膝に負担がかかりやすいので、膝をサポートするスパッツも利用しています。

お客様のご要望の場所にお連れする際に、思ったよりも坂道が急で、想定していたよりも時間がかかってしまったといった苦い経験もして、今に至ります。

 

出会ったお客様には「忘れられない」時間を過ごしていただく

――磯貝さんは、小諸とゆかりの深い歌を歌ったり、草笛を吹いたりして、お客様にまさに「小諸ならでは」の体験をしていただく工夫もされていますよね。

小諸の人力車は「歌う人力車」でもあります。

島崎藤村さんがお好きな方には、「千曲川旅情の歌」や、永六輔さんが小諸に疎開されていた当時、寂しい思いを紛らわせるために作ったとされる「上を向いて歩こう」を、歌ったり、草笛で吹いたりします。

――島崎藤村さんや永六輔さんが、まさに身を置いて、まざまざと眺めていたであろう風景のなかで、そういった歌や趣ある草笛の音を聞くのは、お客様も喜ばれるのではないでしょうか。

「元気が出た」ですとか、感動してウルっとして下さる方もいらっしゃいますね。私も、千曲川を見ながら、お外で歌う、というのは、自分でも気持ちいいと感じるのです。普通に生活していたら、そういう機会ってあまりないじゃないですか。

昨日はチューリップが好きだというお子さんがいらしたので「チューリップ」の曲を草笛で吹いて差し上げたら喜ばれましたね。「アンパンマン」の曲も吹けるんですよ!

人力車を使って下さるお客様には、ご高齢の方と子どもさんが多いので、それぞれのお客様の好みに合わせて曲を選んでいます。

ご利用いただくお客様の好みに合わせて、というのは、歌や草笛ばかりでなく、ご自分からあまりお話にならないお客様には、こちらからお客様のペースに合わせて園内のご案内をさせていただき、お話がお好きなお客様に対しては、お客様のお話を存分に聞かせていただくようにしています。

――それぞれのお客様の好みは、どのように察するのでしょうか。

人力車にお乗りいただく際の会話ですとか、お客様のご様子ですね。

この間も、ご高齢の女性に人力車をご利用いただきました。ご案内をしている間のご家族との会話で、この日がこの女性のお誕生日だと分かったので、「水の手展望台」で、ハッピーバースデーの歌を歌って差し上げましたら、とても喜んでくださって。瞳もうるんでおられました。ああいう瞬間は、この仕事をしていてよかったな、と感じますよね。

こういったサプライズのようなものはすごくいいな、と思っているので、ぜひお気軽にご相談いただきたいです。

 

花粉症がきついんです(笑)

――俥夫として充実している感じが伝わってきますね!逆に、「ここはきつい」といったことはありますか。私は、やはり冬の寒さかなぁと思うんです。小諸は、真冬には最高気温でもマイナス、最低気温にいたってはマイナス10度以下になりますよね。そういう時期でも、磯貝さんは、いつもとあまり変わらない感じでピシッとされているので、心配になるのですが。

ははは。防寒対策ね。最近使っているのは、商品名言っちゃっていいのかなぁ(笑)、ユニクロさんのウルトラライトダウンという薄いダウンです。これを轟屋の衣装の下に着ていると暖かいです。このおかげで、今シーズンはホッカイロ無しですみました。足は、膝をサポートするようなヒートテックのスパッツを愛用しています。足先は足ホッカイロを使いますが、足袋を履いている足先がやっぱり一番寒いかな。

――防寒対策は、かなりバッチリなようで安心しました。寒い冬のシーズンは、懐古園のお客様も減りますが、磯貝さんは、懐古園の三ノ門を入ったところにある帳場で、一日中、お客様を待っているわけですよね。どんな心境でいるのですか。

どんな心境か…。う~ん。「無の境地」です。

お客様に来ていただくためにはどうしたらいいだろう、というのはもちろん考えるんです。でも、そこにあまり根を詰めすぎないようにしている、というか。冬はお客様も寒いわけで。そうなると自然と足も遠のきますよね。

でも、そんな中でせっかく来てくださったお客様には、心を込めて、おススメスポットなどをお伝えします。

――冬のおススメスポット!懐古園は、桜と紅葉の時期には本当に多くのお客様に人気ですが、地元民としては、新緑と冬の時期の懐古園もおススメしたいですね。冬の懐古園のおススメスポットをご案内できるというのは、懐古園を知り尽くした磯貝さんならでは!ぜひ冬のおススメスポットを教えて下さい。

懐古神社の池の噴水の氷った形ですね!この噴水は、冬が来るたびに凍るのですが、毎年形が違うんです。今年はどんな形をしているのかな、と、私も毎年楽しみにしています。そういう冬ならではの楽しみをお客様にも感じていただきたいと思いながら、ご案内させていただいています。

――寒さ厳しい冬の時期も、楽しみを見つけておられるということで、さらに安心しました。そうすると、他にきついことといえば・・・?

今まさにきついです。

――え!?

花粉症が…。花粉症をもっている俥夫です…。

――磯貝さんは、「鼻垂れ俥夫」なんですね(笑)。「日本さくら名所100選」の懐古園が一番賑わう時期が一番きつい、と。

そうなんです。「花たれ俥夫」なんです(笑)。ここ数年で発症したのですが、症状を軽くしようと強めの薬を処方していただくと眠くなってしまうし。いろいろなお医者さんに診ていただいて、何とか改善させたいですね。

――4月8日(土)から始まる小諸城址・懐古園の「桜まつり」開催期間中で、4月15日(土)、16日(日)には、「夜桜人力車」を企画されていますが大丈夫でしょうか。

今年は予防薬を早めに飲んだので、去年よりはいいです!

夜桜人力車は、大人の雰囲気漂う夜の桜の懐古園をお楽しみいただきたいと思っています。月明かりとぼんぼりに照らされた幻想的な園内を、ご家族、友人、恋人と一緒に人力車に揺られてみていただきたいですね。

 

多くの偉人たちに魅せられた空気感を伝えたい

――最後に、磯貝さんの将来の夢を聞かせてください。

懐古園に来たら人力車に乗って園を周る、というようにごく自然な形になってほしいですね。例えて言えば「お茶碗と箸」のような関係です。俥夫の人数も増えて、園内も今よりももっと賑わうようになるといいなと思います。

「人力車は高い」というイメージをお持ちの方も多いと思います。こういったイメージが軽減されて、人力車がもっと一般的な乗り物になるといいですね。轟屋でも、人力車をもっと身近に感じていただく工夫として、ワンコン(500円)乗車体験もおこなっています。

よりよい人力車を目指して、小諸以外の場所も訪れて勉強するようにしています。昨年、下仁田でイベントをさせていただいたのをご縁に、最近は群馬によく旅行しています。関東圏のお客様も多いので、群馬での人力車の取り組みは気候・風土の違いなども含めて好みを把握するうえで参考になります。

それでも、ガツガツと売り込んで、お客様にプレッシャーを与えるようなことはしません。やはり、人力車に乗りたいな、と思ったお客様にご利用いただきたいと思っていますので。

――ガツガツとしない、というのはとても面白いですね。小諸城は、野面積(自然の石をそのまま積んだ、初期の城郭の石垣に多い造り)の丸味のある石垣があったり、田切(自然に形成された谷)や千曲の絶壁といった自然の地形を活かして造られているせいか、どことなく自然のなかに身を置いている感覚をうけます。それに加えて、懐古園の園内には、島崎藤村記念館や小諸義塾記念館、横山祖道さんの草笛の音色を聞くことができる場もあったり、と、文学や、教育、芸術の香もありますよね。城跡にしては、穏やかでしっとりとした空間で、ガツガツしていない人力車はとても馴染むように感じます。

そうですね。そこが、これまで多くの偉人たちが魅せられてきた懐古園なのではないかと思います。大切にしたい空気感ですよね。それぞれの地域や場所で、空気感も違う、気候や人の雰囲気も違ったりする、こういう違いをお客様に感じていただくことは、大切にしていきたいですね。

——今日はありがとうございました!これからも体に気を付けてがんばって下さいね!

[ もっと知りたい、磯貝さん!]

出身
長野県佐久市大沢
好きな食べ物
果物全般(いちご、八朔、スイカが特に好き。八朔は、そのつぶつぶ感がお気に入り。)
嫌いな食べ物
 魚卵(臭みが苦手)、とろろ、キウイ、パイナップルなど(アレルギーがある)
趣味
太鼓(地元の「大浅間火煙太鼓保存会」で活動中)、殺陣(タテ)太鼓も殺陣も、その立ち居振る舞いの美しさをいかに高めるか、に関心がある。
小諸のココ!が好き
いちごが美味しい!:「布引いちご園」には毎年行く。温泉めぐり:さまざまに異なる特色をもった小諸の温泉を楽しむ。標高約650メートルの懐古園の植生と、標高約2,000メートルにある温泉周辺の植生との違いも楽しんでいる。
私の自慢
自慢ポイントは難しいが、今年で30歳。彼女大募集中(笑)。好みのタイプは、小諸の雰囲気に似合う落ち着いた女性。一緒に草笛を吹きたい。
私だから知っていること
 懐古園は、山吹がきれいです。5月初め頃が見ごろ!秋には、黒門跡のイチョウがイチオシです。黄金色のイチョウの葉が散ると、地面は黄色の絨毯に。
[こもろ轟屋~人力車観光ガイド] 小諸城址「懐古園」を中心に城下町、北国街道「小諸宿」の歴史や文化を人力車でご案内いたします。人気の懐古園コースは10分、20分、30分、40分コースあり。料金は1台二人乗り2,000円から。時間やコースによって代金が異なりますので、詳しくはお問い合わせください。
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